・その日彼は死なずにすむか?
著:小木君人 刊:ガガガ文庫17歳のある日、不幸な事故に巻き込まれて死んでしまった少年・鋼一が、自らの死の運命を変えるために、7年前から人生をやり直すことになる、現代ファンタジー。
一度死ぬまでは、友達も彼女もいない、寂しい人生を送っていた鋼一が、「やり直し」の世界で、そんな人生を変えようとして、少しだけ積極的に他人と関わっていく。その中で、鋼一自身と、回りの人間の人生も、少しずつ変わっていくという構成になっています。
鋼一が死の運命から逃れるための「奇跡の欠片」については、きちんとつじつまが合うように考えられていますし、やり直しの人生の中で、前の自分から変わっていこうと努力する鋼一の姿も、素晴らしかったと思います。
ただ、ちょっと7年の巻き戻りは長すぎたなと……鋼一が10歳、小学生の頃まで巻き戻るんですが、その後1、2年で主要なイベントが終わってしまって、残りの5年間は「そして5年後…」みたいなニュアンスで、数行の説明で飛ばされてしまっているんですよね。序盤で速攻「奇跡の欠片」が揃ってしまって、後は消化ゲームというのも、なんだかなぁ、と。
ただ、もっとイベントを起こそうとすると、今度はP数が足りませんので、やはり年数をもっと短くするというのが適当だったかな、と。鋼一が14歳くらいで「一度死ぬ」のがちょうど良かったのでは。
・L 3 詐欺師フラットランドのおそらくは華麗なる伝説
著:坂照鉄平 刊:富士見ファンタジア文庫10ヶ月ぶりの3巻は、イラストが水谷悠珠氏に変更になっています。
バーンと苦しめているものと同じ、「罪人竜の息吹」を人為的に埋め込まれた少女・チェルシーとの出会いと別れ、さらにアーティアの隠された秘密なんかも明らかになって、ラストには黒幕も登場したりと、一気にストーリーが加速した感じです。
義理の父親に恋をしたチェルシーと、それを分かってやれなかったルパートの物語は、一種の悲恋という形で終わりました。この辺、もう少しチェルシーの想いを、ルパートに伝えてやれなかったかなと思います。あそこまで暴走したチェルシーが助かるという結末は難しいですが、それでも何か、2人だけのシーンがあれば良かったかなと。
そして、相変わらずバーンは華麗ではなく詐欺師でもありませんが、明確な「力」を持っていなくても、アーティアへの想いを原動力にして、根性と勢いだけで泥臭く乗り切ってしまう辺りは、実に主人公らしいですね。
ある意味タイトル通りなのかもしれませんね。「おそらく」なので、確実に華麗ではない、と。
・白夢 放課後の霧使い
著:瀬尾つかさ 刊:富士見ファンタジア文庫「クジラのソラ」の瀬尾つかさ氏の新作。
4年より前の記憶がない少年・榮一が、両親の死後に引き取られた全寮制の学園で、学園を覆う「霧」と、霧の中から出現する化け物・「はぐれ」、そしてはぐれを狩る「霧使い」の学生たちに出会い、自らも霧使いとして行動しながら、失われた記憶を探っていく、現代ファンタジー。
作中でも登場人物の台詞として描写されていましたが、「霧」に関する設定が、「ほぼ何も分かってない」んですよね。「はぐれ」が住んでいる異世界のことも、どうして霧が出てくるのかも、まだ全てが謎のまま。エピローグの引きと、榮一の失われた過去の描写から、おそらく次巻以降に明らかになるようなので、この辺の設定についてはまだ評価出来ません。
その他、キャラの立ち位置と、実際に描写される量が若干アンマッチなのが気になりました。具体的に言うと神楽なんですが。榮一と同じように桁外れの力を持ち、雪姫に拾われた過去を持っている、と、重要人物バリバリな設定なんですが、出番が序盤と終盤だけで、中盤はぽっかり姿が見えなくなっています。もう少し、神楽に関する描写が欲しかったですね。
新シリーズの1巻ということを差し引いても、ややキャラ数が多めで1人1人の描写が薄く、設定も不明点だらけと、ちょっと不安な立ち上がりなのですが、前シリーズは2巻以降きっちり盛り上がっていきましたし、今回もそうなってくれることを期待しています。
・花守の竜の叙情詩
著:淡路帆希 刊:富士見ファンタジア文庫「紅牙のルビーウルフ」の淡路帆希氏の新作。
滅ぼされ、敵国の捕虜となった世間知らずの姫・エパティークと、妾腹の子で、兄であり第一王位継承者の王子から疎まれている第二王子・テオバルトが、たった2人で「エパティークを伝説の銀竜を呼び出すための生け贄に捧げる」旅に旅立つ、ファンタジーラブストーリー。
テオバルトとエパティークが、旅を通じて互いを理解し合い、信頼するようになるまでの心情描写がとても秀逸で、引き込まれます。「ルビーウルフ」のような魔法が飛び交う派手な戦闘アクションなどはありませんが、その分、2人の変化・成長をしっかり書き込まれているので、十分楽しめます。
ラストは切ない別れが待っていますが、「みんなが幸せに暮らしました」系の無条件ハッピーエンドは、この話には似合わないですし、作品の雰囲気を壊さない、ぴったりのエンディングだったと思います。非常に満足度の高い作品でした。シリーズ展開はしないっぽいですが、次作も期待しています。
・聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 6
著:三浦勇雄 刊:MF文庫J聖剣についての情報を調べるために、旧群集列国に向かった先で、帝国の襲撃に出くわしてしまう第6巻。
帝国が本格的に行動を開始し、ジークフリードの企みも徐々に明らかになる中で、セシリーとルーク、そして独立交易都市が絶体絶命のピンチに陥る……というところで以下次回。今まで1巻でエピソードとしては完結していましたから、珍しいですね。
見所は、一度敵に囚われた後、脱出するまでのセシリーの姿です。序盤なら取り乱すか、もしくは自責の念でグズグズになっているところですが、今回は仲間が助けてくれることを信じて、来るべき時のために準備を整えていました。ちょっと活躍したらすぐ鼻を折られることで有名な主人公ですが、挫折を繰り返す中でも、確かな成長を遂げていることが分かる、いいエピソードだったかと。
最終ページに印象的な一文と一緒に、見開きのイラストがある、という構成は、前シリーズ「上等。」で使っていた手法ですね。僕はこれ結構好きです。イラストと上手く融合した、ライトノベルならではの描写ですし。
来月にはアニメも放映され(7/3追記 アニメ放映はもっと先でしたね)、ストーリーもそろそろ佳境。一気のペースで進んでいってほしいものです。
おそらくアニメ放映中に新刊がもう1冊出るんじゃないかなーとは思ってますけど。・蒼月のイリス2
著:星家なこ 刊:MF文庫Jいきなり「候補者はあと4人です」とか言われて驚きましたよ、という第2巻。
え、えーっと…もう少しなんか、バトルを繰り返すのかと思ってたんですが、意外に展開が速くてびっくり、というか……まだ本編では2回しか戦ってないのに、「一色」を巡るバトルは準決勝に突入ですか。どうなんでしょう、このペース。
そんな「準決勝」が進行する最中、「一色」に反抗する「世界の半分」が仕掛けてきたハニートラップに慎太郎が引っかかったり、それにイリスが嫉妬したりしつつ、最後は再び信頼関係を結んで敵を打ち倒す、という展開なのですが、相変わらずイリスの来た世界だったり、「一色」についてだったりの設定説明がないんですよね。状況だけは切迫してるんですが、こっちがついて行けないというか、何というか。
ぱっと見、あと1、2冊で終わる…んでしょうか。それまでには、もうちょっとこの「置いてけぼり感」がなくなってくれるといいのですが。
・ぱんどら
著:西野かつみ 刊:MF文庫J「かのこん」の西野かつみ氏の新シリーズ。ちなみに僕は「かのこん」は読んでません。アニメだけは見ましたが。何このやりすぎお色気アニメ。
閑話休題。
高校入学の日、小学生みたいな容姿の同級生・ハルマの「しもべ」にされてしまった主人公・キヨタカが、ハルマが開けてしまったパンドラの箱から飛び出た「災厄」たちを捕まえるために、否応なく戦う羽目になる、現代ファンタジーラブコメ。
キヨタカは魔力がない普通の人間で、災厄を倒す武器を使ったあとは、魔女であるハルマのキスで魔力を補充してもらう必要がある、という設定なんですが……もーちょいこう、キスシーンの描写を丁寧にというか、時間をかけてもらいたいなぁと。まあパンドラバスターを撃つたびにキスシーンが入る(都合3回)ので、そうそう手間をかけていられないというのもあるのかもしれませんが。
また、キヨタカとハルマのラブコメよりは、「災厄」が巻き起こす、破天荒な事件の描写が優先されているせいで、2人の心情がイマイチ伝わってきません。もう少しラブコメ側に傾けてもいいんじゃないでしょうか。
ラストで恋のライバルキャラも出てきたので、次巻以降はそっち側がメインになることを期待します。
・ゼロの使い魔 17 黎明の修道女(スール)
著:ヤマグチノボル 刊:MF文庫J誰かアンリエッタを埋めて。あと才人も島流しに。
前巻で才人の元を離れたルイズが、やさぐれたり拾われたり修道院に入ったりしながらも、最後は自分を取り戻して、ついでにアンリエッタに言いたいことを言う、というストーリー。
一応ガリア王になったタバサが、またロマリアの陰謀に巻き込まれてどっかに連れ去られたりしてるんですが、多分些細な話。
それにしても……なんでしょうね、この才人の誠実さのない後悔。ついでにアンリエッタの悪びれない他者依存度。いくらなんでも酷すぎませんかね。特にアンリエッタ。敢えて嫌われるキャラとして描写しているとしか思えません。何が「あなたは恋だけに生きられていいわね」ですか。何か壮大な決意をして女王を襲名したんじゃなかったですか、この人は。
ということで、アンリエッタの身勝手さが目に付く巻でした。あと才人も、最低だと自分を罵る割に、成長がないというか、行動が改善されないというか。いい加減17巻も進んでいるんですから、状況に流されないとか、確固たる自分を持つとか、そういう方面の成長を見せてもらいたいものですが。
そしていつの間にかマリコルヌとの漫才役でしか出番がなくなったティファニアに号泣。重要キャラだったはずなのに。
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